星々のたわむれ(恋愛詩)

【天使の羽】
背中を舌でなぞる
まどろみ
天使の羽が生えてしまうかもと
ふいに恐ろしくなって
重なり合う身体を離した
君はなんでって
泣きそうな顔をして
君は純白
僕は漆黒
混じりあってしまった今晩を
無かったことにしようと思う

【石膏の君】
君の首すじを噛みちぎる夢を見る
粘ついた白濁液が手首を締め上げ
僕を罰してください
その石膏の指さきで
僕の呼吸は
雨粒に濡れ
傘など無し
明日も出会ってしまうでしょう
僕はあなたのなかに閉じこもる
あなたの雫は遠い夜空に溶ける 

【星々のたわむれ】
貴方の指に啼かされた金曜日の夜  
ポストの中に星が落ちる音がした
吐息が混じりあったとき
貴方はすこし笑っていた
明日世界が終わりませんようにと
そっと耳たぶのふちにした口付け
夜明けを望まないのは僕だけで
そんなこと最初から分かってる

【見せつけたかったもの】
僕が貴方に見せつけたかったのは
指輪ではなく
指輪の跡だった
優しく抱かれないと壊れてしまうと
強く手を引かれないと消えてしまうと
あのとき伝えるべきだった
都会の夜は艶やかです
田舎の夜は鮮やかです
愛が僕らを穿つなら
氷も宝石と一緒です 

【私が不老不死だったら】
私が不老不死だったら
不特定多数に愛を振りまかないだろう
無理に笑ったりしないだろう
陽のひかりを吸いこんで
雪の結晶を丁寧に集め
あなたにおはようっていうだろう
いつかあなたが
おやすみになるときがきたら
秋風を墓標にして
桜の木の下にあなたをうめて
地球のうたをうたうだろう

【舞台上】
君は月との踊り方を知っている
僕はまだ月と向き合えずにいる
星々はほんのりと甘いのだと
彼女の手のひらに瞬くそれら
夜空に零した僕たちの涙は
グラスに注がれゆくミルク


Kindleで発売中の『マリオネット』に登場する椎谷というキャラクターが綴った詩。なかなか色っぽい詩を書く椎谷!!作中で椎谷は、愛情というものをひどく嫌悪しているように思いましたが、彼にも愛おしい人がいたのかもしれないとほっとしました。

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お月見文庫|月見珈詩

やっぱり過去にとらわれてる